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日記

『「会社がなくなる」丹羽宇一郎著 講談社現代新書』を読んで

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約2年近くに及ぶコロナ禍です。各著名人がコロナ禍から見えてきた日本の様々な問題点を書物に表し出版しています。中でも丹羽宇一郎さんの書物は難しく会社経営者の立場からなので自身にとっては異質ですが、一般人がそれなりに解釈し部分的に感想を記してみました。

第二章 GAFAも長く続かないーこれから世界を支配するのは中小企業だ

欧米流ジョブ型雇用への転換

日本の従来型雇用システムは「メンバーシップ型雇用」といわれ、新卒を一括採用し業務内容や勤務地を限定せず仕事をローテーションしながら長期に渡り育成していくシステムです。終身雇用、年功序列、企業別組合という「三種の神器」とともに、日本のビジネススタイルを特徴づけ戦後復興と高度成長を支えてきました。

これに対して欧米は「ジョブ型雇用」です。人材のスキルを重視し、求人時点で業務内容や勤務地、待遇、給与が明確で採用後に変動することは殆どありません。年齢や勤続年数ではなくスキルや成果で評価されますので、退職や転職はごく一般的で人材が不要になったら企業は解雇することもあります。

*(仕事に対して人を割り当てるのがジョブ型雇用。人に対して仕事を割り当てる日本のメンバーシップ型雇用との違いです。定年退職まで働いた身でありながら、欧米と日本との働き方に全く相違があることを今更知った次第です。正規と非正規との問題点は今は置いておきます。

欧米の「ジョブ型雇用」システムから、男女の雇用格差がなく男女で育児休暇を普通に取得できる、その理由がわかりました。雇用体系が全く異なり日本ではなかなか浸透していかない現実があります。特に男性の育児休暇です。進んでいる少子高齢化は日本にとっては差し迫っている待ったなしの大問題です。

一応、公務員として定年まで働きました。公務員ではあっても仕事上の男女の格差、育児休暇の取得し辛さを感じていたのは事実です。迷惑をかけるのでは、という後ろめたさがあったのです。理解のある管理職と同僚との出会いがあり何とか40年近く勤めることができました。「公務員は、民間より恵まれているよ。」と、絶えず言われていたのも確かですが。

転勤も独特な仕組みかもしれません。新鮮味のある職場で人間関係が広がり・・・というメリットもありますが、その職場に慣れるまでのプレシャーは想像以上です。まして、子供の進学や家を新築する等の人生設計が損なわれてしまう等のデメリットが満載です。テレワークが一般化してきた現在、会社や職種にも寄りますがそろそろ転換期なのかもしれません。)

終章 中小企業が世界を翔けるー「信用・信頼」こそ日本の力

科学技術の著しい凋落

コロナ禍を追い風として覇権を強める中国と強い警戒感を示すアメリカとの新冷戦が先鋭化する中、日本の立ち位置はどんどん低くなっています。日本のGDPが世界全体に占める割合は1995年18%から2020年6%と三分の一に急落。

世界の企業の時価総額の推移は、日本は1995年NTT(2位)とトヨタ自動車(8位)の二社がトップ10にランクインしていましたが、2020年はトヨタ(43位)が最高です。世界競争力センターが国ごとの競争力を示した2020年版「世界競争力ランキング」によると、世界主要63か国・地域の中で日本は34位、過去5年間で最低順位。

東アジアの中でシンガポール、香港、台湾、韓国を下回り、27位マレーシア、29位のタイより低い評価でした。平均的賃金は下落が止まらず、回復する兆しは一向に見えません。かつて、「科学立国」として産業界を牽引していた科学技術の凋落は著しい。

GDP比の教育投資額や大学教育などの人材とインターネット上での資産創出といった知的資産創出の項目も低い評価で、ここ10年間は13位から25位とトップ10にも入っていません。「世界大学ランキング」(2021年版)、日本から200位に入ったのは、36位東京大学と54位京都大学のみ。ベスト10は前年同様アメリカとイギリスの大学で占められています。アジアのトップは20位中国の精華大学、23位の北京大学。

人材こそ日本の最大資源

最大の課題は人口減少です。人口は国力の源で、残念ながら「衰退途上国」と位置づけられます。かつての勢いを失い国力を低下させている日本が世界に誇れるべきもの、それは教育を受けた人材の層の厚さです。この場合の教育とは、知識や技術だけではなく道徳や社会規範も含みます。

日本再生の道は、その教育を受けた多くの人材を生かすことです。中国やインドは最近急速に国力を上げていますが、日本の人材レベルには遠く及びません。国家の最大の力、最大の資産は国民です。日本の中間層は年々衰退していますが、教育は広く行き渡っています。中間層に定着した「教育の力」こそ希望の源です。

人間の頭にもっと投資しなければいけない。日本の将来を切り開いて行く王道は教育しかありません。国の最大の資産は人です。OECDの報告書「図表でみる教育2020年版」によると、2017年初等教育から高等教育の公的支出が国内総生産(GDP)に占める割合は日本が2.86%。比較可能な38カ国中37位。最下位から2番目、日本は未来に投資していないのです。

エリートこそ国の宝

人材は意識的に育てないと伸びません。「エリート」というと、高学歴、高収入で一般庶民から遊離した人物をイメージしがちですがそれは本来のエリート像ではありません。「私」より「公」を優先し人のため社会のために尽力する人。自分が置かれた立場で責任と義務を明確に意識して行動できる人。学力より精神力の強さや人間としての誠実さが求められる人。

「信用・信頼」こそ日本の力

日本の人口減少は止められません。人間の価値は量ではなく質、モノではなく心です。世界の信用・信頼を得るために必要なのは、知性であり技術であり精神です。一度損ねた信頼を取り戻すには何年も何十年もかかり、時間が経てばうやむやにするという日本的対応は国際的には通用しません。

守るべき「心の文化」

勤勉さ、優しさ、モラルの高さは他国に引けを取らない日本の強さ。それはしつけや教育の成果なのか、国民性なのか。利害、損得だけでは動かないという珍しい国民性なのかもしれません。世界中の多くの国々や人々の信頼を得て活動を続けることが、人口減少の中でも世界の中で存在感を失うことのない唯一の強さです。

*(安心して出産し子育てできる、そのための金銭的保証。未来を担っていく子供たちの教育費が無料になること等を願います。どこを厚く予算化していくのか。けれども、未だ多くを語らない膨れ上がっていく赤字国家予算です。記憶の新しいところではギリシャの例がありました。この国家の赤字を?未来の子供達が背負って行くのでしょうか。

家庭では赤字が出そうな場合切り詰めて生活していきます。国家予算もどこかを大きく切り詰めながら、執行しても良いのでは?難しいことはよくわかりませんが知らず知らずの間にとんでもない国になっていませんように。)

丹羽宇一郎:元伊藤忠商事株式会社会長、元中華人民共和国特命全権大使。1939年、愛知県生まれ。名古屋大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。1998年、社長に就任。2004年会長に就任。各種の内閣府役職に就任。

著書に「仕事と心の流儀」「社長って何だ」「部長って何だ」(以上、講談社現代新書)「死ぬほど読書」「人間の本性」「人間の器」(以上、幻冬舎新書)など多数。

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