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日記

発達障害サラリーマン 借金玉著『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』を読んで

投稿日:2020年12月10日 更新日:

ー背表紙の帯よりー

世界は「ハイスコア自慢」で満ちていて、まるで、ハイスコアを出すことが人生の目的のようだが、あなたの人生を生きてこう。自分のレースを自分のスピードで走っていこう。人生はまだまだ続くのだから。(省略しながら)

借金玉:1985年生まれ 診断はADHD(注意欠陥・多動性)の発達障害者。幼少期から社会適応ができず登校拒否や落第寸前を繰り返し高校を卒業。紆余曲折しながら早稲田大学卒業後、金融機関に就職。全く仕事ができず退職後、起業。調子に乗り、急角度で落ち謝金を抱える。その後、一年かけて「うつの底」から這い上がり、不動産屋営業マンとして現在に至る。

はじめに

「発達障害と診断された人は勿論、、かもしれないと感じている人、そして仕事や人間関係がうまくいかないと悩んでいる人にも読んでいただけると嬉しいです。」で始まっている。著者が診断を最初に受けたのは大学生の時で、人生がうまくいかなかった理由がわかった一方で何らかの才能があるのかもしれないという予断もあった。

当時は、あの偉人も天才も発達障害だったという内容が目についていた。スティーブ・ジョブズのように偉人・天才=発達障害といわれているが、明確な根拠はないようだ。以降に書かれていた発達障害についての定義は省かせて頂き要点のみを記してみた。

発達障害というのは、仕事、人間関係、日常生活の三つに「厄介な障害」だ。この三つの「普通のこと」ができるようになるだけで「何とか食っていける人」にはなれる。著者の趣味は作家を目指していたほど文章を書くこととインターネットを好む。この本のテーマは「生存」、すなわち「生き抜こう」。社会に適応するためにこの本を読もうではなく「少しでも楽に生きるために役に立てば」という気持ちで書かれている。

著者は中学校の出席日数は半分以下、高校は単位取得ギリギリのサボり魔。授業は退屈さと面白みのなさを克服する訓練を果てしなく重ねるようなものに過ぎなかった。人生の殆どを圧倒的に出遅れた後、後半で爆発的な加速をする、その繰り返しで生きてきた。そのパターンで社会人になるまでなんとかなってしまっていた。

発達障害という人生の問題と真っ正面から向き合ったのは、ほんの数年前のこと。気づいた時には全てが手遅れで、やっと人生の問題と向き合うことができる。発達障害の発現形は人それぞれだが、少なくとも「このように失敗した」という知見は参考になるだろう。地道にぐう直に積み上げることを今更ながら目指すだけで、事業には失敗したが、この本を読み役に立てることを願う。

第一章 自分を変えるな、「道具」に頼れ

1 集約化 バラバラに散ったものは必ず失われる。 持ち物を管理するためには「かばん」が大切で「全ての物をひとつのかばんにいれておく」という習慣を付ける。かばん選びには、十分な容量、開口部が大きい、自立する(立てて置ける)、頑丈である・重要物品の保護材が入っている、内部は4つ以上に仕分けられかつそれぞれ独立の開口部がある、A4のバインダーが最低でも4つ入るだけのサイズと容量、小物が一手で取り出せる・大きく・一覧性の高いポケット。

*理想のかばんメーカーと実際に使用しているかばんが写真で掲載されています。

重たいかばんは安心の証。混乱したかばんの中身は、混乱した頭の中身。かばんが整えば頭が整う。

2 一覧性 全てを一目で見通せること。

3 一手アクセス アクセスに障壁がある物は使えない物である。

第二章 全ての会社は「部族」である

職場というのは、言うなればひとつの部族で、そこは外部と隔絶された独自のカルチャーが育まれる場所。それは排他的な力を持ち、部族の掟に従わない者は仲間ではない、そのような力が働いている。「空気を読む」とは、そのような部族の中に流れるカルチャーをいち早く読み取り、順応する能力。

現場の日常業務というのは「誰かに教えてもらう」もしくは「見て盗む」のような習得方法が往々にして必要。業務習得や遂行の最高の潤滑油は「好意」であり逆もまた然り。

第三章 朝起きられず、夜寝られないあなたへ

発達障害の人が「普通」になるためには、「普通ではない」ことをやらなければいけない。限界さえ超えず、かつ社会生活に曲がりなりにも折り合っていかれるとそれでいい。無理をして今すぐ生活を定型の中に嵌め込む必要はない。2日連続の徹夜は駄目だが、1日であれば仕事のパフォーマンスに大きな変化はない。「不定型」な生活リズムをうまく乗り切っていく工夫が必要。「普通」の脅迫観念にとらわれない。

第四章 厄介な友、「薬・酒」とどう付き合うか

かつて、インターネットの世界には薬物乱用と放逸な行動、そして自傷や自殺未遂といった行為を繰り返す有名人がいて何人かが亡くなった。彼らの死はこの社会への抵抗でもあるかのように見えた。そこから得られる人の承認や或いは心配してもらえる、気に掛けてもらえるということは、人生を通して喜びだった。

著者の不規則な生活に睡眠薬は欠かせなかった。薬もお酒も、正しく使えば人生をとても助けてくれる。しかし、この「便利なもの」が「命の危険をもたらすもの」に化けることだけは必ず覚えておく必要がある。

第五章 僕が「うつの底」から抜け出した方法

発達障害を抱えて社会を生きていくということは、程度の差こそあれ非常に高い負荷のかかるもので、当然の帰結として二次的に様々な問題、所謂二次障害が起こる。うつ病の方もらっしゃるし、不安障害や強迫性障害といったもの、或いはアルコール依存症を含める考え方もある。二次障害を併発していない純粋なる発達障害というケースは多くはない。

「自分は能力的に問題があるのだから人より頑張らなければならない。辛さに耐えなければいけない」という考え方は、発達障害を持ちながら働いていたり学校に通っていると生まれてくるもの。やる気そのものは大事だが、二次障害のリスクを軽く見てはいけない。

一度重篤な精神的疾患を患ってしまうと回復は容易ではなく、何とか社会生活が平常通り営めるまで回復するのに年単位の時間を要してしまう。それを踏まえ、「逃げる」という判断は間違いではない。「休む」という決断は最悪の判断にはなり得ない。ベストではないがベターになり得る。

生存していくことを全てに優先し、逃げていいし休んでいいのです。努力は環境が整ってからやればいい。焦りすぎることなく心と身体を回復させることを優先させてください。「うつは甘え」という言葉を真正面から受け止めず、自分の心を守ってください。

しかし、人生は続く。ほどよく諦め、投げ捨てずに自分と付き合っていきましょう。生きているだけであなたは素晴らしい。自分を許しながら。

余りにも赤裸々すぎて、うまく表せずに本書の要点のみを記してみました。読むほどに当事者だからこそ伝わってくる著者の熱い思いを感じました。自分自身生きづらさを感じている人、職場や身近なところにいて何とか理解しようと考えている人にとって、是非本書全体をお読み頂きたいと思います。

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