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日記

『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』長谷川敦弥著 野口晃菜監修(SB新書)を読んで

投稿日:2020年11月27日 更新日:

著者ご自身が幼少期からの行動を振り返り返った時、ご自分に発達障害ADHDの傾向があるとわかったのは23歳で現在の会社に入社してからのことです。24歳で代表取締役社長に就任しました。現在、ADHDの特性が短所になるのか長所になるのかは環境次第で、その短所と言われている特性を長所に生かせる可能性があると考え会社経営をなさっています。

長谷川敦弥:1985年生まれ 名古屋大学理学部数理学科卒業、2009年8月株式会社LITALICO代表取締役社長に就任、「障害のない社会をつくる」というビジョンを掲げ、障害のある方に向けた就労支援サービスを全国58カ所、発達障害のある子どもたちを中心とした教育サービスを全国70教室等、幼少期の教育から社会での活躍までワンストップでサポートする独自の仕組みを築いている。

以下、要点のみを記しました。

はじめに

「うちの子は席にじっと座っていられないし、逆に一つの事に集中し出すと切り替えられない。友達とけんかが多く学校でも問題になっている。この先、ちゃんとした人間に育ってくれるのか・・・」という相談をよく受けます。仕事は、発達に凸凹のあるお子さんに寄り添いながらよりよい方法を共に探っていくことです。

本書では、近年注目されている「発達障害」という特性のある子どもたちが社会の中でどのように輝いていけるのかをお伝えします。発達に凸凹のあるお子さんにとって大切なこと、障害のある・なしに関わらず全ての人が個性を活かして活躍できる社会をつくる事に思いを馳せて下されば・・・。

第1章 ADHDは僕の強み

「発達障害」は2005年に「発達障害者支援法」が制定されてから、日本でも広く知られるようになりました。先天的な脳の偏りによって社会生活に困難が生じる障害をいい、大きく自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、学習障害などがあります。

ADHDは「注意欠陥多動性障害」と言われ文部省の定義では、不釣り合いな注意力、衝動性、多動性等とネガティブで残念な特性として表されています。短所として言われている特性は、環境次第で長所として活かせる可能性を幼稚園から高校まで「問題児」と言われてきた著者が証明しています。

著者に対して母親が「男の子はそのくらい元気で伸び伸びしている方がいい」という考え方を貫き、父親もいつも応援してくれました。地域の皆さんが温かく個性として捉えてくれ、先生以外からクレームが来ることは少なかったようです。でも、中学校での友人関係は最後までうまくいきませんでした。

大学1年生の時に焼き肉屋でアルバイトをし、そこで出会ったご夫婦がいつも全面的に褒めてくれました。接客態度や客を増やすためのアイディア、将来の可能性について他にはない才能を認めてくれたのです。「人と違う」というネガティブに捉えていたことが「人と違っているとは素晴らしいことなんだ、才能になり得るんだ」と実感できるようになりました。学校では、「自己中だ」「空気が読めない」と欠点ばかり言われていましたから。

世の中を良くするためにこそビジネスや技術の力を使っていきたいと、そういう生き方がしたいと強く意識するようになりました。大学卒業後、障害者の就労支援を行っている株式会社LITALICOに入社し、専門家に会ったり論文や研究成果を調べ学びました。

ADHD傾向にあると、注意散漫の裏返しで全方位的に関心が向かい常に新しいものを探し求めます。話すのが得意な人が多く講師や司会者、ラジオのパーソナリティー、漫才師などに向いているかもしれません。新しいもの好きで行動力があり話し上手、それはまさに「起業家」に相応しい。アスペルガーの特徴を持った起業家も多くいます。(ここに、日本やアメリでよく知られている著名人の名が出てきていました。)

自分に合った環境さえ整うことさえできれば、、その特性は「障害」ではなくなります。学校は広い世界のほんの一部でしかないので、この瞬間の環境だけで世界に絶望しないでほしい。世界は広いからどこかに自分が輝ける場所があります。

第2章 子どもが一番の先生だ

周囲から見る「困った子」は、実は「困っている子」なのかもしれません。もしかしたら周囲の関わりやその子が過ごす教室こそが、その子にとって耐えがたい環境なのかもしれません。子どもたちはみんな違っているのに、同じ方法、同じペースで学ばせようとするから問題が生じるのです。

みんな違っていることが当たり前で、一人一人に合った学び方を探していくと、誰もが自分らしく自信を持って成長していけます。お子さんの特性をより深く「知る」こと。個別最適な方法でお子さんの「成功体験」を積み重ねること。お子さん本人だけでなく、周囲の「環境」も変えていくこと。

第3章 子どもの心に火をつける

自閉症、アスペルガー症候群、ADHD傾向を持つお子さんたちには明らかに創造性が豊かな子が多く、興味のあることにはすごい集中力を発揮し将来の可能性を感じます。今の学校教育や社会の中では彼等の長所を伸ばす場所が少ない。当所では、答えを自分で創造しものづくりをしていくので、好奇心が強く刺激されます。一度心に火がついた子の「自ら学ぶ力」はすごいと感じさせられます。

第4章 「多様性」を力に変えていく働き方

急速に情報化社会が進む中で、働き方は大きく変わってきています。大人も将来活躍できる職業の正解などわからない時代に来ています。今の大人が一見役に立たなく見える子どもの興味や関心が、実は将来大きな才能になって行くのかもしれません。「○○オタク」とか「○○マニア」と言われるほどのこだわりも、働く上での「武器」になる可能性があります。

第5章 障害のない社会をつくる

自分に合わない学習方法や自分に合わない校風であっても、殆どの子どもは今の学校に適応するしかないのです。その子の個性が壊れてしまうほど我慢して適応している子も多くいます。不登校になっている子どもたちが10万人以上いるのが現状です。学校にはもっと多様な選択肢が必要です。

勿論、今の学校教育の良いところもたくさんあります。日本人の「規範」や「常識」のレベルの高さ。多くの人の被災地でのボランティア活動。並んだ列に割り込みはしない。相手の気持ちを考えて行動できる・・・。そういう文化は世界に誇れる長所であり、日本の教育の成果です。

規範を守ることと多様な個性を伸ばすことを両立できたらこの国は最高です。

本書を読んで

何よりも著者のご両親や育った地域の皆さんが寛大な方々で温かく成長を見守り可能性を信じてきたこと、アルバイト先での経営者ご夫妻の励ましがあり自分自身を冷静に分析できたこと。それらがプラスに作用し現在の著者の存在があります。更に、子どもたちの将来に真剣に立ち向かって会社経営をなさっているところに共感を覚えました。

「発達障害」と言われている子どもたちの側から考えると、「問題児」としてレッテルを貼られながら生きている辛さがあります。子どもたちに障害が有る無しに関わらず、生きづらさを感じ不登校というかたちで現れているのが当然ではないでしょうか。

「発達障害」と言う用語に、違和感・抵抗感を感じる保護者がいるのではないでしょうか。差別用語にも聞こえがちです。過去に「痴呆老人」が「認知症」と言われるように替わり現在は極一般化しています。「発達障害」ではなく適切な用語はないものかと思うのは私だけでしょうか。

2005年に「発達障害者支援法」が制定されました。その数年後に退職となりましたが、当時、「発達障害」についは現在ほどよく知られていませんでした。現職の後半にはクラスの中に個性的な子が数人いましたので、養護教諭や学校長との連携を深めたり研究会で学び、日常の授業や生活の対処にあたったものです。幸い、他の保護者の理解もあり学級担任を務めることができました。

学校の授業は一斉に一律に行っているように捉えられています。教科によってはそのような授業もありますが、「一人一人を生かすためには如何にして・・・」と、授業研究の中で頭を悩ませていたものです。ですから、個性的な子どもたちの存在をあながち全く否定しているわけではないのです。実際にはうまくかみ合っていないのかもしれません。

退職後、一年間ですが、「放課後等デイサービス」指導員の経験もあります。十数人の子どもたちでしたが、著者曰く「みんな違って」個性的でした。管理者の経営に対する考え方が著者ほど深くなかったように思われます。私にとっては営利目的が前面に出てきているようにしか捉えられませんでした。

「発達障害」に関するマニュアル本を数冊読んでいかすが、本書では当事者がご自分の体験から分析し子どもたちの将来、就職まで見据えた会社運営をなさっているところが異なりました。著者が唱えているように公立学校と民間の教育機関・施設との連携が必要な時代が来ているのかもしれません。その理想としている「障害のない社会をつくる」へ向かって行く姿を応援致します。今は応援するしかできませんので。

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