日記

『人生の道しるべ「大人に絵本を」ノンフィクション作家 柳田邦夫 ラジオ深夜便(NHKラジオ第一)より』

「ラジオ深夜便(NHKラジオ第一)」の午前4時台を良く聞いていたが、最近はアスリートの成功話やその親の子育て論が多く、正直、あまり聞いていなかった。今朝方(2020.10.8)、何気なくラジオのスイッチを入れ思わず聞き入ってしまう。二回に渡って放送された柳田邦夫さんのインタビュー後半で、残念ながら前回は聞き逃していて。

柳田邦夫さんというとノンフィクション作家で一頃の航空機事故、医療事故の後にはテレビでおなじみの顔だった。歯に衣着せぬ的確な物言いで脚光を浴びていたように記憶している。そう言えば、最近テレビでお目にかかっていない。お子さんの死を機にしばらく絵本の読み聞かせに精力を注がれていたようだ。「大人に絵本を、普及活動20年」。命・心の再開の根源は絵本にあり、人間は物語で生きていると語る。実際、1000冊も大切にしている絵本があるそうだ。

「星の王子さま」サン=テグジュぺリ(フランス)

息子さんが亡くなる年の春に「岩波書店」が児童文学シリーズを出版し、第一巻が「星の王子さま」サンテグジュペリ作。その本を誕生日祝いに息子さんが買ってくれた。綺麗な装丁で箱入り、表紙は金箔の文字、挿絵が素晴らしい。元々この「星の王子さま」はサンテグジュペリが妻に対する遺言として書かれたものである。

以前に「星の王子さま」を読んでいたので、息子からプレゼントされた本は書棚に見えるように置いて飾っていた。その時点でじゅっくり読んだ訳ではない。息子を亡くし暫くして読んでみるとこれまでにないインパクトがあり、読む人の状況によって受け取り方が違い最後の方が心に残った。

「大切なことは目に見えないんだよ。夜になったら僕の星を眺めてよ。僕の星はちっぽけだ。その星の一つだと思って眺めるとみんな友達になれるよ。たくさんの星のどの星も好きになるよ。僕はあの中の一つの星に住むんだ。そこで笑っているように見えるんだ。みんな笑っているから君は笑い上戸の星を見るよ。」

息子が僕にプレゼントしたのは深いところに親父に伝えたいものがこの中にあったから。残してくれた一冊の本から息子の声が聞こえてくる。ある日、道を歩いていると幼稚園の子供達が大勢いた。全ての子供達に対して、「幸せになれよ。」と言う気持ちが湧き上がってきた。絵本は深いものを秘めている。絵本は息が長いが新作もたくさんある。

(「星の王子さま」はベストセラーだったので購入して読んだ記憶がある。この様な深い意味があったとは。)

「よだかの星」宮沢賢治

醜いよだかは疎外され天に駆けのぼる。星からも疎外され青白い星になって燃えてしまう。疎外と孤独。

(宮沢賢治の物語は殆ど読んでいる。「よだかの星」は教科書に載っていたように記憶しているが、私が小学生時代か現職当時だったかは定かではない。深い意味合いのある物語として捉えている。)

「ちょっとだけ」瀧村有子

なっちゃんの家に赤ちゃんがやって来た。歩くときもママは赤ちゃんを抱っこしているので、なっちゃんはママのスカートをちょっとだけつかんで歩く。喉が渇いて牛乳を飲もうとしたがママは忙しそう。とっても重い牛乳を冷蔵庫から出して、こぼしながらもやっとの事でコップに入れることができた。ほのぼのとする一コマ。

柳田邦夫さんが「読み聞かせ」をしていて、この場面で思わず拍手をした男の子がいたそうだ。よくできたねと。「どうしてちゃんとできないの。だからいったでしょ。」と、とかく親は失敗すると言いがちになる。親の目と子供の目とは違い、親は子に対してできないことや失敗に目が行きがちになる。

「どうしてできないの。」ではなくできたことを喜び一緒に褒めてあげよう。それは子育てと教育の基本であり、大人の感性が問われる。大人にこそ必要で是非絵本を読もう。命と心を伝えるために絵本を読もう。

「目を閉じて見えるのは」バーネット(アメリカ)

父親が女の子を夜寝かしつけようとするが、女の子は寝ようとしない。「どうして、海って青いの?」「海の中でギターを弾いたり歌っている魚がいて、毎晩、君が寝ていると青い涙を流して歌うんだよ。」、「雨ってなあに?」「空をトビウオが飛んでいて、空から涙が飛び散っているんだよ。」、「さあ、寝なさい。」「どうして寝なきゃいけないの?」「それはね、目を閉じた時しか見られない素晴らしい世界があるからだよ。」

(早く子供を寝かしつけたい親の気持ちはよくわかる。子育てをしていた頃、最後の一言のような美しい言葉はとても出てこなかった。仕事と家庭とで気持ちに余裕がなかったのは確か。その時点では全力投球していたつもりだったのだが。)

「飛んでいった風船は」チェシーオリベルス(アメリカ)

おじいさんと孫が風船を持って座っている。孫は少しだが、おじいさんはたくさんの思い出のこもった風船を持っている。おじいさんの風船の数は人生の豊かさで、孫はまだ人生の歩み始め。おじいさんは次第に風船を手放していくので孫は不安になる。一つずつ飛んでいく風船には体が思うように動かなくなったり、記憶がなくなったり、病気になって行くことを表している。

おじいさんの思い出の風船は全て君のものになり思い出として受け継いでいく。心の中に受け継いでいく。おじいさんは旅立つけれど亡くなる訳ではなく、自分の生きた証が子や孫に伝わっていく。人間の命の危機を捉え心の問題として悔いのない形で最期を迎え、例え亡くなっても心の中に生きていく。

人間の命は肉体的命ではない。精神性の命は下がることはなく成熟していく。自分が体験し実感してわかっていく。感性を枯れさせないで豊かにしていく。人生後半で成長を続かせることができる。体力がなくなっても認知症になっても病気になっても、身近にいた人の心の中で生き続ける。

亡くなった後も生きている人の心の中で生き続けてくれる。死で終わりでない。今、自分自身どう生きるか。宗教家ではないけれども「死後生」と名付けた。いずれやって来る死後の未来を考える時、今を考えること。過去の中にも今がある。人間の命「今でしょ。」と。ある有名学習塾の先生の言葉にあるが、今を考えた時、自分を否定的に考えるのではなく、一筋の光を見つけることができる。

人は物語で生きている。自分の命は無意味だと思ってはいけない。日常茶飯事が星の一つ一つで繋がりがある星座として捉えると物語として考え繋がる。たいしたことではないと思っていることも肯定的になる。根底にはその人の物語性があり、それが人間の本質。

(人それぞれこの世に生を受け人生の曲がり角に差し掛かると、一人一人が壮大なドラマの主人公だと思える。ドラマ性はあってもそれが、果たして子や孫に心に残る生き方をしてきたかを考えるとドキッとしてしまう私。それが現実なのだ。)

終わりに

物凄く世界は危機的状況にたっている。負の要素を変え、自分自身がプラスに転じていく。人間の滅亡につながりやすい感染症、自然災害、核問題等。そういう中で、人間がどう生きていくのかが問われる。

自分の人生を一つの物語として、自分自身の肯定感を持って行く。一人一人の生き方が大事で一人では国家・社会を変えられないが、できることは何かが大事。これまでノンフィクション作家として道標になってきたものは、現場に立つこと、肉声を聞くこと、そこから思想と生き方をつかんできた。今、84歳、これからもコツコツと書いていきたい。「死後生」、大切な命。集約の作品を書いていきたい。

柳田邦夫:1936年生、栃木県出身 84歳 東京大学卒業 ノンフィクション作家、評論家 航空機事故、医療事故、災害、戦争のドキュメントや評論を多く執筆している。大宅壮一ノンフィクション賞(1972年)、菊池寛賞(1995年) 書籍 「大人が絵本に涙する時」、「マッハの恐怖」、「零式戦闘機等」。

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