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日記

『「還暦からの底力」歴史・人・旅に学ぶ生き方 出口治明著 講談社現代新書』を読んで

投稿日:2020年7月30日 更新日:

還暦から数年経ち少々遠ざかってしまいましたが、題名の『「還暦からの底力」歴史・人・旅に学ぶ生き方』に惹かれ大いに参考になると考え購入し、読み進みながら参考になる箇所について感想を交えながら記しました。子供の頃の還暦の人のイメージとして、赤い頭巾をかぶりちゃんちゃんこを着てお祝いされ凄く年を取ったおじいちゃんとおばあちゃん。増して70歳以上となるとかなりのお年寄りでした。

「年を取ると思うように身体を動かすことができないし、病気になってしまうから還暦からの人生は何もしないで静かに暮らしているもの。」平均寿命は60歳代でしたから、70歳を過ぎた人はかなり長命な人でした。身内の祖父母や叔父叔母達は60歳代から70歳前半で亡くなっていたように記憶しています。

現在は人生90歳、いいえ100歳の時代です。「金さん銀さん、100歳」が話題になった頃、長命な彼女達は貴重な存在でした。すっかり日本中の人気者でテレビコマーシャルにも出演していましたから。今では100歳の方は普通に身近なところに大勢いらっしゃる時代です。

ですから、この書籍の中で出口さんが何回も語っていらっしゃいますが、60歳なんてまだ人生の折り返し地点に過ぎないのです。我が身がその年齢になると隔たりというかギャップを感じていました。正直、その折り返し地点を若干過ぎています。

一番難解に思われた第四章について、凡人につき理解不能の箇所を端折りながら感想を交え記してみました。他の章等、詳細につきましては本書をお買い求め頂くことでご了承頂きたいと思います。

第四章 世界の見方を歴史に学ぶ

日本が鎖国できたのは「世界商品」がなかったから

日本は気候が温暖で四季があり自然条件に恵まれ、人間が生きて生きやすい環境にありますが、世界商品がありません。当時は、胡椒、お茶、絹が世界商品で、それを獲得するために人々が来訪したり国が乱れる原因にもなっていきます。

安土桃山時代に世界通貨だった銀が大量に発見され、海外から銀を求める人が押し寄せてきました。信長や秀吉の時代をピークとして、乱掘によりとれなくなったタイミングで鎖国となりました。「世界商品」がなくなったわけですが、産業革命がヨーロッパで起こり、日本のGDPの世界シュアが半減し貧しい国になっていきました。

ヨーロッパ諸国はキリスト教を布教するという名目で宣教師達を派遣していたが、それは表向きで世界覇権が裏にあり、日本は信長や家康によって逃れられたという説もあります。果たして、どちらなのでしょうか。経済の面からいうと出口さんでしょうか。東南アジア諸国が次々と列強の植民地になっていき、第二次世界大戦後、独立を果たしていきました。日本は唯一免れた国だったように捉えていました。その辺りは出口さんの考えとは異なります。

江戸時代は、自由な人々や物資の移動が禁じられていて、例えば鹿児島で飢餓が発生しても幕府の許可が出ないと熊本から米を送れないという事態となり餓死者が発生しました。大名同士の結び付きを嫌がっていたからです。さらに、人々の移動が禁じられ通婚の範囲も狭まれ血が濃くなっていきます。

人々の身体は江戸末期には日本の長い歴史の中で一番低身長低体重でした。成るほど、これで黄色人種でありながら東アジア人や中国人、韓国人より小柄な日本人の訳が納得できました。最近、大柄な若い人が多く見られるようになったのは食べ物のせいかと思いました。それもありますが、歴史的事実がそうさせていたとは恐ろしいです。

江戸時代の文化を好み、生まれたかったという人もいますが、実際には当時の人口の9割が農民です。移動ができないし飢餓になる確率も高かったのです。現在の解釈では、約260年近くの江戸時代は正の部分と負の部分が混在していてどちらを正と負として捉えるかによって変わるようです。出口さんは負と捉えたのでしょう。

阿部正弘は明治維新の父

明治維新頃の世界情勢はアメリカと大英帝国が中国市場を巡り激しく争っていて、ぺりーの艦隊は大西洋からアフリカを回り中国、琉球、日本という航路で来日しました。大英帝国に勝るためには太平洋航路を開くしかないと考えていたペリー率いるアメリカは、最新鋭の艦隊を引き連れ来航しました。単に捕鯨船の補給基地ではなくアメリカの世界戦略に基づいていました。

若くて英明な阿部正弘はアヘン戦争や世界の動きを学び、清の二の舞にならぬよう開国・富国・強兵を描き明治維新を先取りしていた人です。江戸幕府の中で、既に先を読んでいた優れた方がいたとは。それではあえて倒幕しなくても内部分裂をさせながら新政府を起こすことはできなかったのかと考えてしまいます。

幕府を倒した後、大久保利通は攘夷の気運をなくすためには欧米列強の実態を具に見せようとして岩倉使節団の海外派遣を断行し、政府首脳と留学生100人あまりを長期にわたり学ばせました。明治4年、大政奉還から日が浅く政権としてまだ不安定な時期のことでした。

日本の敗戦はおごり高ぶって開国を捨てた結果

日本は日清戦争に勝利し、伊藤博文の慧眼によって日露戦争を上手に引き分けに持ち込み、その後第一次世界大戦にも勝利し、世界の5大国として認められました。しかしこの頃からおごりが出て、軍縮会議や国際連盟を脱退します。開国を捨て富国・強兵だけで行こうと方針転換したのですが、近代産業を構成する資源、化学燃料、ゴム、鉄鉱石がありません。

石油がなくなるため、戦争するしかなくなりました。世界の孤児になり、ドイツしか留学先がなく世界の情報も入らなくなりました。明治と昭和初期の指導者を比較してみると非常に大きな差があり、指導層のレベルが劣化しました。指導層の劣化とは、現在の政治家に相通じるものがあるように思われます。

本当は日本に有利だったロンドン海軍軍縮会議

国力に比べ圧倒的に有利だった海軍軍縮会議の取り決めを手放してしまいました。国民に正確な情報が与えられなかったことや、指導者を含めた教養のなさに原因がありました。

理性にすべてを委ねるのは傲慢である

脳の構造から考えて、脳の全活動の9割以上は無意識の領域です。意識できる部分は1割程度で、理性は人間の脳みその1割部分で生み出された幻想なので、理性をあまり信じない方がよいです。何らかの新しい制度をつくるときには、理性に基づいて行うしかないのでしっかり議論して実行していくしかありません。大事なことは謙抑主義です。人間の頭は大したことがないので、長く続いた伝統や慣習はできるだけ大事にした方が良いでしょう。

歴史の事実とフィクションは分けて考える

例えば、世の中には坂本龍馬ファンがたくさんいます。司馬遼太郎の小説「竜馬がゆく」では、実際の歴史とは関係がなく司馬遼太郎の名文によって坂本龍馬は英雄になったのです。有名な船中八策という言葉自体、明治30年になってはじめて出てきます。

歴史小説は、史実に基づき展開されていくものと思われますが作者が小説を面白くさせるための誇張があるのではないでしょうか。主人公を悪としてしまう内容ではなく、作者の志向が多分に入ってくると思います。信長に関してもファンが多くその傾向は多分にあるのではないでしょうか。「本能寺の変」然り。

世の中はお金が回っているとだいたいうまくいく

世の中や社会を見るとき、最も重要なポイントになるのは経済で、世界の経済がちゃんと回っていると全体としてうまくいきます。次に重要なポイントは、きちんとデーターに基づいて世界を見ることです。残念なことに世の中には「実はこんな大変な事態が起こっている」と悲観論や極論、陰謀論で人々を脅す方が大きな反響を得られ、そういう本や過度に悲観的なことを主張する人が後を絶ちません。

しかし、歴史を振り返ると悲観論は全敗しています。最後のポイントは指導者で、指導者の良し悪しは社会に大きな影響を与えます。人間の脳はこの1万年ほど進化していませんので、過去の指導者在り方や言動をきちんと見ておくことが重要です。これらについては実感として身につまされます。

米中摩擦が米ソ冷戦の二の舞にならない理由

国際関係で注目が集まっているのは、ハイテク・軍事覇権を賭けた米中貿易摩擦です。既に米中の経済力はほぼ拮抗し経済的にはG2の世界に入っていて、歴史を振り返ってみるとナンバー1にナンバー2が肉薄すると、ナンバー1が頭をたたこうとするのは通例です。

アメリカと中国の間にはたくさんの人の交流があり、アメリカへ行って学ぶ留学生数だけでもおよそ37万人。国境を超えた人的ネットワークが形成されていて、アメリで教育を受け博士号を取得して中国に帰国した人材がキャッシュレス化やスタートアップ企業が集まる深圳や杭州をになっています。

実は一致している米中の利害

今の中国に世界の警察官の役割は果たせませんし、アメリカにその役割を果たしてもらいながら、ひたすら経済に力を入れる方が中国にとって都合が良いのです。アメリカと中国はベーシックなところで一致しています。中国の官僚はハーバード大学やマサチューセッツ工科大学といったアメリカのトップ大学で勉強したエリート揃いでアメリカの実力をよく知っているのです。今のところ、中国は売られた喧嘩に冷静に対処しています。

中国ではかなり以前からアフリカを重視し、進出のために様々な手を打っています。国家100年の計の長期的な視点に立った表れです。新興諸国ではアフリカ、アジアではインド、パキスタン、バングラディシュ、インドネシア、ベトナムそして南米でも人口の増加が見られます。

一方、日本では人口が減少しています。人口が減って栄えた国はありません。人口減少にまつわる書籍が書店を賑わしています。利害関係が絡まらず、真剣に未来を考えられる人達が声をあげて行かないと将来は暗い。この辺りについての問題点は、第五章をお読みください。人口減少は解決がかなり難しい深刻な問題となっています。

副題となっている「歴史・人・旅に学ぶ生き方」から

出口さんの豊富な知識力は長年に渡る「歴史・人・旅」から来ているのでしょう。歴史書はとかく勝者が書き残した物と言われ、勝ち残った方が正義で、敗者は悪であると一面的に書かれ残されている物が殆どである。数々の歴史書を読破され、現在の日本の有り様を分析しています。

一頃は、小中学校や高等学校の教科「歴史」は年号と事柄の正に羅列にすぎませんでした。如何に丸暗記するか、それが歴史。最近の歴史教科書は、日本史と世界史を平行して学ぶように若干変化してはいます。しかし、事柄が多すぎて理解させるというよりやはり暗記物から脱していないように感じられるのです。

出口さんは、老若男女、多方面に渡って人脈が豊かでもあります。相手に影響を与えたり与えられたり、懐の豊かさや広さにもなります。世界中を旅している人は心の豊かさが違います。肖りたい部分が多々ありますが、それぞれの置かれた環境が異なりますので、時間とお金が許す範囲で見聞を広くし生きていきたいものです。

 

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