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日記

『森の動物「ひずみ」を知っていますか 今泉 吉晴:動物学者』(NHKラジオ第一)ラジオ深夜便から

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「ひずみ」と聞いて、どこかの歪みかなと思いました。そうではなく、どうやら小動物のようです。初めて聞いた動物名です。「ネズミ」の一種ではなく、「モグラ」の仲間のようです。

今泉 吉晴:1940年東京都生 動物学者、著作家、理学博士(京都大)、都留文科大学名誉教授、書籍 「シートン 子どもに愛されたナチュラリスト」「野ネズミの森」「森のお話」「森の生活」

里山の小屋に暮らす動物学者 今泉 吉晴さん

里山の小屋に暮らす動物学者で森の動物は隣人であり仲間。自然の中で見ている方が得られるものは、はるかに大きい。かつては研究室にこもる日々だった。自分の目で見て心で感じることこそ、人間本来の“物事の知り方”です。モグラの一種「ひずみ」に惹かれ森の中や動物への好奇心を持ち、動物の暮らしの中で生体と行動を観察している。現在、岩手県花巻市在中。

小学校低学年の時、「ひずみ」に出会った。真っ黒でとても小さく、ビロードの塊りのようだった。それが強烈な印象として、一生の仕事のきっかけとなる。父親が動物学者で富士山の懐に住んでいた。父親は「ひずみ」の姿と形を研究していて、初めて「ひずみ」を取れた時のこと。

この冬は、雪は少なめだが、「ひずみ」は雪の中で安全に暮らしている。雪の下の枯葉、その下が土、その間にトンネルをつくって生息している。掘っていると出てくるがなかなか難しい。トンネルの中にいる「モグラ」は安心して落ち着いている。そのトンネルシステムを自宅で作り観察している。

京都大学理学部「ひずみのミミズをハントする行動」論文から、一部を

(ラジオ視聴でしたので、論文名など、多少細かな「てにをは」が異なっていることを、ご了承ください。)「ひずみ」は、トンネルを掘っておいてそこに来るミミズを取る。ハントする。本能的に身についている知恵を持っている。嚙みついてバックする。引き釣りられて、本能の構造、察知の方法、ミミズの臭い、かみつき方、バックの仕方を記憶し、更に本能へとつながる。

動物行動学の理論で研究するには、まず、様々な検証が必要。それを自然の中で見たい。それにはどうしたら良いか。森の中に住むしかない。動物行動学の理論で研究し、不思議なことに、「ひずみ」は山にしかいない。「モグラ」は平地にも都会の公園にもいる。「ひずみ」はなぜ山なのか。山は腐葉土と落葉、地面の構造が都会と違う。都会は地面が露出しているところがほとんど。

「モグラ」は爪が長くブルドーザーのようで、土の中で垂直なトンネルを掘る。「ひずみ」は落ち葉と土の層の間に住んでいるので、土の掘り方が違う。「ひずみ」は柔らかい土を左右に押す。冬の今は雪と落ち葉の下にトンネルを掘る。今年は雪が少ないので、「ひずみ」の生態に大きな影響を及ぼしている。

森は動物の共同体

1985年、山梨県に住んでいた。地下世界を安全な空間にしているのは「モグラ」と「ひずみ」」。木の上には「リス」や「モモンガ」、「こうもり」が生息している。森は動物の共同体で、その一員として暮らしていた。これまで、標本に基づいて研究したり動物園での研究だった。それら両方とも動物本来の暮らしを亡くしている。餌付けをしたりする人間は全ての動物から嫌われる。カラスとスズメは街に暮らしていても、一定のルールの中でお互いに共存し合っている。

見るのが難しい動物、「ムササビ」と仲良くなった。山梨県都留市の神社の森で、夜、待っていると逃げなくなった。滑空コースを見つけ観察していたところ、山の高いところから川の淵まで160mを10秒で飛んだ光景に出くわしたのだ。自分は共存しているのかどうか疑問に思ったが、どうやら山の「ムササビ」は人間を観察していて、大丈夫だと思って出てきていることがわかる。

「ムササビ」の赤ちゃんが落ちていることがある。拾ったらお母さんにならなくてはいけない。春の大風の時、拾ってしまった。一時も離さない胸ポケットを作った。肌身離さずとはこのこと。ウンチ、オシッコの世話まで、要求されたことは瞬時に叶える。眠っているのか起きているのかが続いた。だんだん一緒に遊ぶようにもなってきて、手の平に乗せ遊ばせた。散歩をする等、いろいろ要求が出てくる。家の扉を開けておくと、出て行ってはまた戻ってくる。「ムササビ」の天敵は「テン」。(この辺りの話は、まるで人間の子育てと同じです。母子関係は生き物にとって、全く変わらないものだと、思いました。)

山小屋で暮らすと、「ムササビ」に共同体として認められていった。動物もこっちを見ているし、こっちも動物を見ている。人間も本能を基盤として生き物の共同体の中に入って見えてくるものがある。人間は「火」を使い自然を自分の利益のために使う技がある。人間の能力を無茶な方に使うと、生き物は本能を見せてくれない。文明的な暮らし、人間にとっての常識、本来の天性はどんなものかを知るために「森の生活」は必要で、生き物の世界を見ていくことができる。「森の生活」という本にそれを書いた。

「今泉 吉晴さん」のお話を伺い

「動物園」は大好きで、時間が取れると出かけています。以前は全体的に廻るのが定番でしたが、最近は全体を廻るのではなく、的を絞って廻っています。注意書きを丁寧に読んだり、ちょっとした動物園主催の講演会で話を伺うと、ただ見せる動物園から生態を知り希少動物を保護していく、そんな「動物園」の働きがあることがわかりました。

生態を知ることは野生動物保護へ繋がっていきます。従来の「檻の中の動物」のイメージから変わってきました。でもやはり、「自然のままでが、良いのでは。」の気持ちも少なからずあります。北海道では住宅街に、キタキツネ、エゾシカそして、ヒグマまで出没し騒動になっています。

共存の精神が必要ではないかと、思うのです。動物たちの楽園へ入り込んできたのは人間なのですから。共存の意識や考え方がまるでなく、出没したら射殺してしまうでは、あまりにもむごすぎるのではないでしょうか。かつての北海道は、オオカミとヒグマとエゾシカのバランスが取れていたと聞きます。難しい問題です。

近くの公園を散歩していたら、エゾリスに出会いました。逃げるわけでもなく寄ってくるのです。それもそのはず、この辺りでは、餌付け場があります。野生のエゾリスは、野生のはずですが人間の差し出す餌にすっかり慣れ切ってしまったのでしょう。可愛いまなざしに、「私は餌を持っていないよ。ごめんね。」と語り掛け、複雑な思いで立ち去ってきました。少なからずも、餌付けには賛成できかねます。

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