日記

「北海道立近代美術館」にて「 生誕100年 没後20年 相原求一朗の軌跡  -大地への挑戦ー 」

投稿日:2019年5月3日 更新日:

近代美術館で「画家・相原求一朗(1918-99)」の生誕100年にあたる2018年、および没後20年となる2019年を記念した「 生誕100年 没後20年 相原求一朗の軌跡  -大地への挑戦ー 」の大規模な展覧会がありました。「画家・相原求一朗」に関しては北海道にゆかりがある画家以外、お恥ずかしいのですが全く知識がなかった次第です。

この展覧会は6つのストーリーでたどる、北の大地に魅せられた画家の生涯です。「絵画」にそれほど造詣があるわけではない私ですが、以下、失礼ながら自分なりに感動した「絵」の題名と感想、そして絵の横に書かれていた注釈を織り交ぜながら記してみました。

1.出発 ー画家を志してー
相原求一朗は埼玉県川越の商家の生まれで、戦時中は、兵役により満州に渡っていた。満州の広大で荒涼とした大地が後の北海道とのつながりを感じさせられた。戦後、画家・猪熊源一郎に師事したことで画家への道が開かれた。
「ハルピン、キタイスカヤ」(1944)等、写実的な画風である。

2.覚醒 -厳然と形のある抽象ー
「風景」(狩勝峠)北海道の秋の狩勝峠を抽象的に色で表現、「湖」(摩周)摩周湖の深い青色の神秘さに目がいかず摩周岳のゴツゴツ感の方が心に響いたのか、「海」(網走)流氷が表現されている。写実的な画風ではなく、深い緑色(グリーン系)を基調とした色調で抽象的

3.探索 -ヨーロッパ・南アメリカの旅ー(1964~1979)
やはり深い緑色(グリーン系)の色調、空も青空ではなく曇り空で深い緑色(グリーン系)

「初冬の広場」(1978)から色づかいが変わってきたが、茶色やグレーで描かれていてモノトーン系

4.原風景 -北海道を描くー
北海道は満州の原野に似ている。風景表現を媒介として人間の情感を表すのに北海道は最適なモチーフ
画風が写実的に変わる。
「はこだて港 雪」函館(1971) 白色と茶色
「岬の家」えりも岬(1974)茶色と深い緑
「初雪降る」(1976)、「雪の停車場」(1976)、「網走厳冬」(1977)、「漁港厳冬」(1977)
全て雪の表現が素晴らしい。白色であって白色でない。モノトーン系であるが重厚

5.決意 -ライフワークとしての北海道ー
1980年以降、原則北海道一色 訪れたことがあるどこか懐かしさを感じる北海道の風景
「斜里浅春」(1981)、「小樽運河・大同倉庫」(1981)、「水むるむ(石狩)」(1981)、「早暁の湖」(1983)、「雲動く」(1986)富良野 十勝岳連山、「原生林の中の二つの湖」(1988)ペンケトー パンケトー

6.再出発 -大地への挑戦ー
1990年以降 テーマは大地の美しさ、時間の移ろい、大気の潤いつまり自然のありよう
平原、丘、カラマツ林、白樺林、雲
地名を表さないまでも、北海道人なら十分に北海道を感じさせてくれる

小特集 北の十名山
「羊蹄山」(1995)、「旭岳」(1995)、「利尻岳」(1995)、「雄阿寒岳」(1995)、「斜里岳」(1995)、「羅臼岳」(1995)、「トムラウシ岳」(1995)、「雌阿寒岳」(1995)、「十勝幌尻岳」(1996)、「十勝岳」(1998)

ほとんど登頂した山でしたので、そのスケールの大きさとリアルさに圧倒されてしまいました。一歩一歩踏みしめながら頂上を目指した時の辛さ苦しさ、そしてそれを乗り越えた時の頂上での感動が蘇ってきました。「山」の好きな人のみならず北海道人なら感動に値します。

この「画家 相原求一朗」のことは全く存じ上げず、ただ招待券が手に入ったので出かけてみたのですが、北海道に住むものとして今まで当たり前に見えていた自然の雄大さを再認識した次第です。画風が写実的から抽象的へ、そして再び写実的への変化。色調は数色の基調となる色使いがあるがモノトーン系。

心の奥深いところに戦争体験という何かがあったからなのでしょうか。戦争の愚かさ、醜さ、はかなさをキャンパスに表現することで語っていたのかもしれません。でもこれは、あくまでも私の勝手な解釈です。私たちに戦争体験を深く語らずに逝ってしまった父。ちょうど同年代だった父とオーバーラップしてしまいました。

この時季、近代美術館前庭と隣接する知事公館の静寂とした庭の桜がちょうど今見頃です。静かなお花見を味わうにはまたとない機会です。是非、訪れてみてはいかがでしょうか。

「 生誕100年 没後20年 相原求一朗の軌跡  -大地への挑戦ー 」近代美術館にて 5月26日(日)まで開催

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